音楽雑学

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ギターやボーカルにまつわる雑学のページ

グラスゴー

ロンドンから遠く離れたこの小さな北の町を拠点とするいくつかのバンドたちが、90年代初頭のイギリスのシーンにおいて、決して無視できない大きな勢力となった。
彼らの最もユニークな特徴は、バンド同士の結びつきとても親密だということ。グラスゴー・ギター・ポップ・サークルなどと呼ばれ、音楽的な氷ばかりではなくフレンドシップが前提になっている。
80年代初頭から活動しているギターバンドパステルズの中心人物であるスティーブンパステルと、彼が運営に関わっていたインディーズレーベルである53th&3thが橋渡し役となり、DMXバンディッツ、ティーンエイジファンクラブ、ユージニアス、スーパースターといったバンド達が誕生した。もちろん1つ1つのバンドはそれぞれに個性的なのだが、メンバーがいくつかのバンド兼任していることも多く、ある価値観、ある音楽性を確かに共有している。

豊かなメロディーとシンプルでラウドなギター。マスプロダクトのポップミュージックにはありえない、ハンドメイド感覚。スターシステムとはおよそ無縁の普通の若者風情の生活感。それがアメリカのグランジ系バンド達と互いに交し合う形で、時代の音として浮上したのだ。彼らがやろうとしたことは、ソフトウェア産業となったロックンロールをもう一度自分たちの手に取り戻す作業だった。

ブリストル・サウンド

イギリス南部の港湾都市ブリストルは、知る人ぞ知る刺激的な音楽性を持つ稀有な鉱源であり、1連の作品を検証すれば、そのサウンドがほかの個性的なローカル都市とは1線を画すことに気づく。ハイテンションでありながらもひんやりクールで高いインテリジェンスに逃れたブリストルサウンド。この街が生んだサウンド群におしなべて通底するのは、その音楽性がリズムを強調したダンサブルなサウンドであるにもかからず、澄んだクールネスや時として垣間見せるサティーの悦楽にも似たコップのアバンギャルド性の混在である。

元来出来が盛んなこの街のアーティストたちはレゲエやダブの要素ごく自然な形で自らの傘下に取り込み、独特のテイストに昇華させた。またザポップグルーブの歌詞の過激さをボーカルリスト=マックスチュワードの出身がアッパーミドルであることに求め、politically collectと断ずる向きもあるが、それを持ってザポップグループをフェイクとみなすのは俳句に過ぎない。
ポストパンク以来、ザ・ポップグループがアグレッシブに、リップディグ&パニックがフリーキーに、massive attackやSmith&mighty、トリッキーだダブヤヒップホップといった時代に即した手法持って表現を試みた、この町に深く静かに流れ続ける音楽は我々を惹き付けてやまない。

オルタナティブ

アンダーグラウンドシーンで絶大な人気を得ていたソニックユースがガンズアンドローゼスを要するメジャーレーベルのゲフィンと契約して以来、オルタナティブロックというジャンルが流通した。
もちろんその前からオルタナティブという形容詞は使われてきたが、それはパンク~ニューウェーブから派生したインディーズレーベルの動きとそこで活動するアーティストたちを総称する形容であり、メインストリームの商業力に対抗するもう一つの流れを位置づける言葉であった。

しかし今日はオルタナティヴとは、HMやヒップホップやテクノと同じようにレコード店で区分けされる1ジャンルとなった。それはオルタナティブの音楽家メインストリームに寄港するうる大きな存在となったからなのか、メジャーがインディーズを取り込んだ結果なのか。そのどちらもが正しいのであり、従来のインディーズとメジャーの対立の図式に変化が起きている。メジャーは巨額の金でアーティストのすべてを丸抱えするような契約から、アルバム単位の単発契約が増え、アーティストサイドもメジャーとインディーズ双方のレベルからアルバムを出すという自由度を保っている。

pavementを排出したインディレーベルの雄、マタドールと大手アトランティックのようにディストリビューションの提携などもこなれている。

ローファイ

グランジという言葉が、カート・コバーンの死によって急速に警戒したい形骸化していった一方で、それと前後して新たにメディアで叩き始められたのがローファイという呼び名である。それはジャンプやムーブメントの総称としての前に何よりもまずあなたに与え現れてきた音楽に対するほぼ正確な形容であった。

ソニックユースやニルバーナの音はノイズの要素が強く、特にソニックユースは変則チューニングで独特の音色と行動を作ったが、彼らはぶっちぎりやアンディーモレスといったトッププロデューサーを起用し、最新の機材で最良のゆがみを追求した。しかしローファイと形容されるバンドは、ほとんどがガレージは自宅の1室やごく小さなスタジオでチープでローテクな機材をお持ちこぼせるプロデュースで録音されている。

もちろんそれらは金銭的な問題からではあるのだが、結果として最新のデジタル環境では慣れてしまうとや司法や機材に新たな意味を与えることとなった。一例として7インチのシングル版の隆盛が挙げられる。また音楽に対する姿勢としては、ロックバンドのスタイルを選択するか否かにかかわらず、テクニックの習得を重視せず、ポップやアバンギャルドという形容も拒み、かといって逆の領域にもとどまらない。位置づけを本能的に許可する姿勢は時代の気分を的確に反映してもいる。